散歩するように生きる

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2023年度の大学卒業生とオンライン授業

今年の卒業式に寄せて

 この3月に卒業を迎えた大学生は、入学したとたんコロナ禍で、大学の授業もオンラインになってしまった学生たちです。苦難で始まり、その後の合宿や留学などがままならなかった学生たちが、華やかに卒業式を迎えられた様子を見て、本当に嬉しく感じました。 

 写真は2019年の謝恩会で学生の皆さんからいただいた花束です。翌年の2020年3月の卒業式は、もう簡易開催で、謝恩会もキャンセルされました。寂しい限りでした。それから4年が経ったのですね。

大学のオンライン授業の始まり

 オンライン授業が始まった2020年4月は、学生もですが、実は教員もちょっとしたパニックでした。あまり使い慣れていなかったオンラインでの授業をすぐに準備しなければなりませんでした。

 幸い、私の勤務していた大学は、学生全員がノートPCを持っていたこと、学生が学習の情報や教材を受け取ったり提出したりできるLMS(ラーニングマネジメントサイト)がすでに整っていたため、比較的、順調に滑り出しましたが、それでも、今まで実施していた授業を動画化したり、教材をアップしたりしなければならないわけですから、一日中、自宅でPCの前に座り作業をする生活を毎日続けているうちに、いつもクラクラしているような気分になってきました。会議も全部オンラインです。さらには、試験や大学院の入学試験までオンラインで行うことになり、これまで経験のないことを一つ一つ決めて実施しなければならなかったことは、なかなか想像もしなかった体験となりました。zoom用に、こんな研究室の風景のバーチャル背景を作って、授業動画を毎日毎日作ってました。

世間からのさまざまな声に惑わされる

 2020年は、コロナが始まったばかりの頃で、誰にとっても新しい経験でしたが、その分、両極端の情報が飛び交い、私もだいぶ悩まされていました。中でも文科省が2020年夏に調査を行い、対面授業が5割未満の大学を公表するとしたことには、苦しみました。2020年の新学期には、オンライン授業の充実が何より必要だと要請され、必死でオンライン授業に工夫を重ねていたところに、今度は、文科省はオンライン授業に満足していない学生や父母から苦情が多く寄せられることを理由に、対面授業をしないのは良くないとも解釈される調査を行ったわけです。本当にそれほど多くの苦情が寄せられたのか、本当のところはわかりません。

 新入生にとって、新学期は新しい大学生活に慣れるための大事な時期です。大学の授業はもちろん、友達を作るためにも、対面での機会が必要となります。それができなかったことは、誰にとっても苦しい時期でしたが、コロナ感染という危険と、安全に授業も受けられるという環境と、どちらを優先すべきだったのか、簡単に答えが出るものではないと思います。大学生も大学教員も、限られた環境の中で、学習を止めないようにと努力したというのが真実なのではないかと考えています。

オンライン授業で得たもの失ったもの

 最近では会議なども対面で行われることが多くなり、確かに対面での機会は本当に大事なもので、そこでしか得られない何かがあると感じます。「何か」が何なのか、うまく表現できないのですが、ちょっとした情報交換とか、情報ですらない何か、ヤコブソンの言う「交話的機能」とも言うべきもの、ただ対話することが価値があるということかもしれません。  

 オンラインの授業で、授業内容自体は伝えることができますが、得られないのは確かにこのよくわからない「何か」の部分なのだろうと思います。そのために、何とかしたいと思って、私のゼミでオンラインのランチ会を開催したこともありましたが、結局、zoom上でお弁当を食べていたのは私だけという滑稽な結果になってしまったこともありました。。。試行錯誤が必要でした。

 しかし私はやはり、得たものは大きかったと思っています。人との交流の大きい障害となる距離、それは物理的な距離もありますし、何らかの障壁がある場合もありますし、さらには心理的な距離もあるでしょう。それを超えることができる手段は、オンラインミーティングなのかなと思っています。ちょっとした立ち話ができる機能があるのは、メタバースでしょうか。これからに期待したいと思います。

 

 

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